ハンドメイド作家として順調に販売を伸ばしていても、つい忘れがちになるのが会計ソフトへの仕訳入力です。
開業届を提出した後は、来年の確定申告に向けて帳簿付けをしていく必要があります。
税務署への提出をはじめとしたスケジュールや事前に用意しておくものを確認する意味でも、確定申告の説明記事も合わせて参照してください。
毎年2月になると会計ソフトへまとめて入力しているという人もいるかと思いますが、理想は定期的に仕訳入力をしておくことです。
そのためにも、ハンドメイド作家の経理に役立つ帳簿付けのやり方をここで学んでおきましょう。
ハンドメイド作家としての活動を続けていくために、継続的に会計ソフトを開いて帳簿付けをしていきましょう。
目次
ハンドメイド作家が使う代表的な勘定科目
青色申告に向けて帳簿付けをしていると「勘定科目」と呼ばれるものが出てきます。
勘定科目を簡単に説明すると「取引の内容を表した名前」のことです。後々振り返ることができるように取引を区分しておくための用語だと思ってください。
勘定科目について事前に知っておきたい知識
勘定科目を考える上で、事前に押さえておきたいポイントがあります。
それは、勘定科目というものは「厳格に決められたものではない」ということです。
ハンドメイド販売ガイド.comではfreeeをはじめ3つのおすすめ会計ソフトを紹介していますが、会計ソフトによって勘定科目名の違いがあったりもします。
法律上で使用すべき勘定科目というものが決まっているわけではありません。
極端な例を挙げると、経理処理(仕訳)をする際に「雑費」という勘定科目ひとつに全ての取引を区分してもいいわけです。
ただ、全てを一律で「雑費」として経理処理してしまうと、当の本人ですら内訳がわからなくなりますよね。
自分自身がハンドメイド作家としての活動を振り返る際に、何にどれだけ経費がかかり、どこからの収入が多いのかが不明では困ります。
また、一般的な勘定科目ごとの金額比率と極端に乖離していると、税務署の調査対象者となる可能性もあります。あまりにも巨額な雑費を計上して確定申告書を提出すると、どう見ても怪しまれますよね。
覚えておきたい代表的な勘定科目
ひと括りにまとめず、取引内容がわかるように勘定科目を使い分けて経理処理していくことはすでに説明しました。
使い分けるといっても、全ての勘定科目を駆使するわけではありません。
代表的な勘定科目を予備知識として持っておき、会計ソフト上で選択していくだけで青色申告を行うには充分です。
お金の流れは「入金」と「出金」の双方向です。ここでは収益と支出に分けて、代表的な勘定科目を説明していきます。
入ってくるお金についての勘定科目
売上などで発生する収益についての勘定科目を確認していきます。
- 売上高
- 商品の販売により発生した収益・収入。ハンドメイド作品の販売などが該当します。
- 売掛金
- 販売したものの代金として受け取っていない状態。商品発送時に売掛金として仕訳を行います。
- 受取利息
- 銀行預金口座で発生する利子。事業用口座を用意している場合でも利息は発生します。
- 雑収入
- 事業収益に該当しない収益。仕訳ができない収益を分類しましょう。
この4つの勘定科目を知っておくことで、収益に関する取引のほとんどを仕訳できると思います。
出ていくお金についての勘定科目
売上を上げていくには、多くの出費が必要です。
すぐ思いつくものとして、作品づくりに必要となる材料の仕入れがありますね。
その他、支出に関する勘定科目は数多くあります。利益を残すためには、どこに経費がかかっているかを把握することは大切です。そのためにも、代表的な勘定科目を正しく使い分けていきましょう。
- 買掛金
- 購入したものの代金を支払っていない状態。継続した取引がある場合に使用します。
- 未払金
- 購入したものの代金を支払っていない状態で、単発の取引である場合。例えば、備品をAmazonなどで注文しクレジットカード支払いを選んだ際に該当します。
- 仕入
- 商品や原材料の購入代金。ハンドメイド作品の材料費が該当します。
- 地代家賃
- 事務所家賃や駐車場料金。自宅を事務所にしている場合は、業務で使用している割合に応じて(家事按分)経費として計上します。
- 新聞図書費
- 新聞や本などの購入代金。勉強や資料としてハンドメイドに関する本を購入した書籍代が該当します。
- 旅費交通費
- 電車・バスなどを利用した際の交通費。イベントや仕入れで交通機関を利用した場合の支払いが該当します。
- 通信費
- 電話代などの費用。携帯電話などの電話料金だけでなく、インターネット通信料や切手代も該当します。
- 消耗品費
- 事務用品などの費用。ボールペンをはじめとした事務用品はもちろん、プリンター用紙や名刺代などが該当します。
- 荷造運賃
- 商品や荷物の配送料の支払い。イベントでの対面販売を除き、ハンドメイド作品の販売は基本的にインターネットを介して行うため、商品の発送の際に荷造運賃が発生します。小包やメール便はこの荷造運賃で処理し、郵便局での発送については通信費で処理します。
- 支払手数料
- 手数料の支払い。銀行振込を行う場合の振込手数料が該当します。また、ハンドメイドマーケットプレイスにて設定されている販売手数料も、支払手数料として処理してください。
- 雑費
- どの勘定科目にも該当しない場合の支払い。振込手数料といった少額の経費をまとめて雑費とすることもあります。
個人事業主特有の勘定科目である「事業主借」と「事業主貸」
よく使われる勘定科目をいくつか紹介しましたが、これらの勘定科目は企業の会計でも同じように使用されています。
ただ、その他に個人事業主特有の勘定科目も存在しています。
ハンドメイド作家として活動し確定申告を行う人の多くは、個人事業主だと思います。
したがって、個人事業主特有の勘定科目である「事業主借」と「事業主貸」についても理解を深めておきましょう。
正しい確定申告のためには大前提として、個人事業主としてのお金とプライベートのお金を区別することが大切です。
開業届の提出後に事業用口座を開設しておくことを推奨します。手続きや使い勝手の面から多くの作家さんに人気の「楽天銀行」での口座開設がおすすめです。
個人用のお金を事業用のお金とする「事業主借」
「事業主借(じぎょうぬしかり)」とは、個人用のお金を事業用の資産や支払いとして使用した場合に使う勘定科目です。
わかりやすい例としては、事業用の経費を個人用の現金で支払ったケースを挙げることができます。
事業用の経費である事務用品1000円分を個人用の現金で立て替えた場合の仕訳は下記のようになります。
消耗品費 1,000円 / 事業主借 1,000円
個人の生活費の支払いは「事業主貸」
個人事業主には「給与」というものが存在しません。個人と事業主が一体であるからです。
ハンドメイド作品の販売で稼いだお金は、事業用の預金口座から個人用の預金口座に移動した上で、生活費として使用することになります。
事業用から個人用へのお金の移動の際に使う勘定科目が「事業主貸(じぎょうぬしかし)」です。
事業用の銀行口座から個人のお金として10万円を引き出した際の仕訳は、下記のようになります。
事業主貸 100,000円 / 普通預金 100,000円
ハンドメイドマーケットプレイスでの販売における仕訳の具体例
ハンドメイド作品を販売し収益を上げるには、イベント出展や委託販売などでの対面販売をはじめ、オリジナルネットショップ運営など、多くの方法があります。
その中でも、多くの人が実践しているのが、ハンドメイドマーケットプレイスでの販売でしょう。
ここでは、国内最大級のハンクラサイトであるminne(ミンネ)を例にして、ネットを通じて販売した場合における仕訳を解説していきます。
売上を帳簿付けする際は、次の2ステップとなります。
- 売上を計上する
- 入金を処理する
それでは、具体的に見ていきましょう。
売上を計上する
売上を計上する際の仕訳を説明する前に、確認すべき重要なポイントがひとつあります。
それは「どのタイミングで売上が発生した」と捉えるのかという点です。
結論を先に書いてしまうと、一般的には「ハンドメイド作品を発送したとき」を売上計上のタイミングとしています。
つまり、商品発送をした日付が売上の日付となるということです。
また、売上の入金は、商品発送と同時ではなく後日の入金であることも、あわせて認識しておきましょう。
使用する勘定科目ですが、すでに説明した中のひとつ「売掛金」を用います。
例えば、1000円のピアスを4月15日に発送したのであれば、仕訳は下記のようになります。
4月15日 売掛金 1,000円 / 売上 1,000円
また、商品発送につきものの送料についてですが、出品側が負担している場合は送料も同日付で処理しましょう。例えば、送料500円を現金で支払ったケースでは、下記のように仕訳を行います。
4月15日 荷造運賃 500円 / 現金 500円
入金を処理する
登録している自分の銀行口座へ入金されるタイミング(支払サイト)は、ハンドメイドマーケットプレイスごとに異なります。
例えば、minneの場合は「毎月月末締めの翌月末払い」とされています。つまり、4月15日に商品が売れた分の売上は、5月31日に入金されるということです。
また、入金については、販売手数料についても考慮して仕訳を行う必要があります。minneの販売手数料は10%(1000円の売上の場合は100円が手数料)です。
したがって、4月中の売上に対する5月末の入金については、下記のように仕訳を行ってください。
- 5月31日 普通預金 900円 / 売掛金 1,000円
- 支払手数料 100円
ここで大切なことは、普通預金と支払手数料を合わせた借方(左側)の合計金額と貸方(右側)の合計金額が一致していることです。
複式簿記において借方と貸方の金額は一致しますので、漏れがないようにチェックしながら会計ソフトに入力していきましょう。
帳簿付けのやり方と仕訳についてのまとめ
ハンドメイド作家として知っておきたい勘定科目ならびに代表的な仕訳を確認してきました。
最初はわかりにくいかもしれませんが、用語に慣れてしまえば問題なく処理できるはずです。
ハンドメイド作家として活動する以上は、正しく確定申告を行いましょう。まだクラウド会計ソフトを導入していないという人は、必ず導入してくださいね。